2/26/2017 「重症患者の栄養療法ガイドライン」のダイジェストを試みる その12017年の日本静脈経腸栄養学会は、2月23日~24日に岡山で開催されました。当院では、ICU栄養プロトコルの改訂を予定しており、今回、日本集中治療医学会の力作「重症患者の栄養療法ガイドライン」についてのシンポジウムを拝聴しました。このガイドラインは、作成された先生がたの入魂の作品として敬服しますし大変勉強になりますが、97ページもあるので、ボリュームにおののき「明日にしよう」と言って、読むのを後回しにしちゃう恐れが。
多くの医療者に知ってもらわないともったいないので、わが社(宮城厚生協会坂総合病院)のICUに関わるスタッフに平易に紹介できる内容となるよう、シンポジウムのレポートを兼ねて、ダイジェストを試みます。ガイドラインは何らかの推奨を出さないといけないので、EBMが十分でない領域でも、「弱く推奨する」と言わざるをえないものもあるそうです。 では、早速わが社で再確認すべき項目を抜粋してみましょう! ■栄養療法の開始 ICU入室後ではなく、重症病態に突入後、24時間以内に経腸栄養(EN)を開始。遅くとも48時間以内。ENは生命予後を改善させるとまでは言い切れないものの、感染症発症の低減、コスト低減の意義は確立されているようです。 →わが社もプロトコルを確立して達成しましょう! 1日の目標カロリーは25kcal/kg、蛋白は1.2g/kg以上で良いようです。 →プロトコルを簡略にして使っていただくには、わが社ですと、高カリウム血症がなければまずはペプタメンAF一辺倒で良いでしょうか。海外ではプロテインパウダー使いまくりだそうです。 ■経腸栄養(EN) 循環動態が不安定なときはどうする? ホントに不安定ならやらなくて良いとのこと。 カテコラミン持続注を施行中のENは、フロアからはNOMI(非閉塞性腸管虚血:腸間膜の末梢血管が攣縮を起こし、腸管虚血に陥る)を心配する声がありましたが、達人のお言葉では、カテコラミンが減量できる状況になればアリとのこと。安定の目安は平均血圧60mmHgだそうです。 栄養チューブの位置は誤嚥リスクがなければ胃内でも良し。 幽門後は肺炎が少ない一方、幽門後にこだわるとENの開始が遅くなる。 →ウチではまず看護師が経鼻胃管を胃に入れて、誤嚥のリスクがあれば後日内視鏡医にお願いし、8Frの経鼻栄養チューブを幽門後に入れるのがベターでしょうか。患者さんのバイタルが安定していて、かつ明らかにNST委員長がヒマな場合、お申し付けくだされば委員長が透視下で空腸に入れます。 エネルギー投与量はどうしたら? 重症になる前に栄養障害がなかった患者さんなら、1週間以内は最低500kcal/日もしくは20kcal/hrでENができていれば御の字、1週間でそれに達してない場合に静脈栄養(PN)を考慮だそうです。重症になる前から栄養障害のあるかたの目標は不明確とのこと。達人のお言葉では、日本人よりBMI高値が標準の海外のデータは単純にあてはめられないとも。 →わが社にあてはめると、ペプタメンAFもスタンダードも2パック(計600kcal)入れられればPNをガマンできますね。 その2に続きます…。 コメントはクローズされています。
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